車を購入する際の見積書に「リサイクル料金」という項目があります。
リサイクル料金とは何なのでしょうか。また、なぜリサイクル料金を支払う必要があるのでしょうか。
その理由は、自動車リサイクル法により、車の所有者はリサイクル料金を支払うことが法律で義務付けられているからです。
ここでは、自動車リサイクル法について詳しく説明します。
自動車リサイクル法とは
自動車リサイクル法は、「解体した車の部品を、資源として再利用するための法律」です。
つまり、車を廃車するときに出るゴミを減らして、「リサイクル型社会」を作るための仕組みです。
車をリサイクルするために、その関係者は以下のような役割があります。
- 車の所有者(最終所有者)
リサイクル料金を支払い、廃車にする車を引取業者に引き渡します。 - 引取業者
廃車を引き取り、フロン類の回収業者または解体業者に引き渡します。 - フロン類回収業者
フロン類(カーエアコンなどに使われており、オゾン層を破壊する原因となるもの)を回収して、自動車メーカー・輸入業者に引き渡します。 - 解体業者
廃車を解体します。エアバック類を回収して、自動車メーカー・輸入業者に引き渡します。 - 破砕業者
解体された車を細かく砕いて、シュレッダーダスト(鉄などの再利用できる資源を回収したあとに残るガラス・ゴム・樹脂などの破片)を自動車メーカー・輸入業者へ引き渡します。 - 自動車メーカー・輸入業者
シュレッダーダスト、エアバック類、フロン類を引き取り、リサイクルを行います。
【自動車リサイクルの流れ】
このように、廃車をリサイクルするための役割が細かく決められています。
この仕組みがあることで、解体する車のほぼすべてをリサイクルすることができます。
なぜ自動車リサイクル法は必要なのか
自動車リサイクル法が必要となった大きな理由は、以下の3つがあります。
不法投棄をなくす
不法投棄とは、「ゴミなどを法律で決められた場所以外に捨てること」です。
車を廃車にする際、リサイクルしきれなかった残りをゴミとして埋め立ててきました。
しかし、埋め立てできる場所が少なくなってきたことで、処分費用が高くなったのです。
それにより廃車が不法投棄されたり、正しく解体されなかったりすることが問題になりました。
ですから、不法投棄の問題をなくすためには、「解体された廃車を資源としてすべて再利用できるようなリサイクルシステム」が必要だったのです。
フロン類を正しく処理する
カーエアコンの冷媒(れいばい:エアコンなどのなかを循環するガス)にフロン類が使われています。
フロン類をきちんと回収しないと、オゾン層を破壊したり、地球温暖化の要因になったりして環境に悪影響を与えます。
そのため、地球環境の悪化を防ぐためにも、法律によりフロン類の処理方法を厳しく決める必要があったのです。
エアバック類を安全に処理する
エアバック類は爆発性があります。
そのため、不法投棄などで処理されずにそのまま放置されると危険です。
そのエアバック類を安全に処理するには、専門的な技術が必要になります。
そのためフロン類と同様に、エアバック類の安全な処理方法が求められたのです。
これらの理由から自動車リサイクル法がつくられました。
車を廃車にするときの処理方法が、地球環境や安全のためにどれだけ大切なことか理解できたと思います。
車の所有者が支払うリサイクル料金はいくらか
リサイクル料金は、車のメーカーや車種によって異なります。
自動車メーカーまたは輸入業者が、「シュレッダーダストの量」「フロン類の量」「エアバック類の個数や取り外しやすさ」などからリサイクル料金を設定します。
リサイクル料金の目安は以下のとおりです。
車の種類 | リサイクル料金の目安 |
軽・小型乗用車(コンパクトカー) | 7千円~1万6千円程度 |
普通乗用車 | 1万円~1万8千円程度 |
中・大型トラック | 1万円~1万6千円程度 |
大型バス | 4万円~6万5千円程度 |
リサイクル料金は戻ってくる車を購入する際には、リサイクル料金を必ず支払う必要があります。
このとき、リサイクル料金を支払ったことを証明する「リサイクル券または領収書」がもらえます。
リサイクル券または領収書は廃車にするまで、車検証などといっしょに大切に保管しておきましょう。
ただし、車を売却すればリサイクル料金は戻ってきます。
なぜなら、リサイクル料金の支払い義務が生じるのは「車の最後の所有者(廃車にする人)」です。
つまり、車を売る人は「最後の所有者」ではないということです。
ですから、車を購入した際、一旦支払う形になりますが、売ればリサイクル料金は戻ってくるのです。
地球環境のために
ここまで説明で、自動車リサイクル法の重要性を理解できたかと思います。
廃車する車を資源として無駄なくリサイクルすることは、地球環境を守ることにつながります。
つまり、自動車リサイクル法とは、「循環型の社会」を実現するためにとても重要な仕組みなのです。
したがって、リサイクル料金を支払うことは、自動車ユーザーの大事な役割です。