車に付けるエアロパーツは何のためにあるのか知らない人もいるのではないでしょうか。「エアロパーツはドレスアップするためのもの」という印象が強いかもしれませんが、付ける意味は他にもあります。
エアロパーツを付ける理由は、走行中の空気抵抗を小さくするためです。エアロパーツの効果で走行が安定するだけではなく、加速性が高まります。さらに、空気抵抗が小さくなることでエンジンの力を無駄に使わないことになるため、燃費が良くなることにもつながります。
そこでこのページでは、エアロパーツ付ける意味とその効果についてさらに詳しく説明します。
目次
エアロダイナミクスとは
エアロダイナミクスとは、「空気の流れ方やそれによって生じる力の作用についての空気力学のこと」です。車をデザインする際には、このエアロダイナミクス(空気力学)が非常に重視されています。
(出典:https://gazoo.com/)
エアロパーツは、その車の印象を大きく左右するためデザイン性が重要です。しかし、エアロダイナミクスを重視する最大の目的は、「空気抵抗を小さくすること」です。空気抵抗とは、「車が進もうとする力に対して抵抗する風の力のこと」です。
この空気抵抗を小さくすることで、「燃費性能が高まる」「走行中の安定性が高まる」「加速が良くなる」などの効果があります。何気なく車に付けられているエアロパーツですが、実は重要な役割を果たしているのです。
ダウンフォースって何?
空気の流れ方によって、ボディを浮き上がらせようとする力が生じます。これを「揚力」といいます。揚力が生じると、タイヤを路面に押しつける力が小さくなるため、走行が不安定になります。そのため、揚力が発生しにくいボディデザインにする必要があるのです。
そこで、車体を空気で押さえるために「ダウンフォース」が利用されています。ダウンフォースとは、「空気の流れによって車に下向きの力が生じること」です。エアロダイナミクスを積極的に活用したダウンフォースによって、車体を路面に押しつけることができます。そうすることで、駆動しているタイヤにもっと大きな力をかけることができるため、加速性能や安定性が高まります。
ただし、ダウンフォースを利用するということは、それだけ空気抵抗が大きくなることにもなります。
空気抵抗の大きさ
空気抵抗の大きさは、車の速度の2乗に比例します。たとえば、「80km/hのときの空気抵抗は40km/hのときの4倍」です。また、「120km/hのときの空気抵抗は40km/hのときの9倍」になります。
以前では、エアロダイナミクスを重視するのは、ほとんどがスポーツタイプの車でした。しかし現在では、燃費性能を上げるためにすべての車でエアロダイナミクスが重視されています。
なめらかなボディラインの車が増えた理由
すべての車にエアロダイナミクスを取り入れることで、最も変化したのは「ボディライン」です。一昔前の車は、ボディラインが凸凹で角張ったものがほとんどでした。しかし、現在の車のボディラインは、曲線を多く取り入れ、なめらかなものが多くなりました。
ボディラインをなめらかにすることで空気の乱れがなくなり、空気抵抗を小さくすることができます。これを「フラッシュサーフェス化」といい、燃費が向上するだけではなく、「風切り音」を小さくする効果もあります。現在では、ほとんどの車でフラッシュサーフェス化が行われています。
さまざまなエアロパーツ
エアロパーツとは、「空力効果をさらに高めるためのエクステリア(外装)パーツのこと」です。ここでは、エアロパーツをいくつか紹介します。
エアダム
車体の下に流れ込む空気を減らして揚力をおさえるためのエアロパーツです。フロントバンパーの下に付いているものを「フロントエアダム(フロントスカート)」といい、ボディの側面に付いているものを「サイドエアダム(サイドスカート)」といいます。
スポイラー
ルーフや車の後方に取り付けられるエアロパーツで、新たに空気の流れをつくりだして揚力をおさえる効果があります。つまり、空気抵抗をあえてつくることによって、走行中の安定性を高めるためのパーツです。
トランクの上に付いているものを「リアスポイラー」、ハッチバッグのルーフ後部に付いているのが「テールゲートスポイラー」、フロントのバンパー下に付いているのが「フロントスポイラー」、後部のマフラー辺りに付いてるのが「リアバンパースポイラー」といいます。
ウィング
飛行機のハネを下向きにして、車の部に付けたものが「ウィング」です。見た目がよくリアスポイラーと間違えられます。ウィングは、揚力(風の流れにより浮き上がろうとする力)を下向きに働かせることで、車体を押さえつけて安定性を高めます。
ボルテックスジェネレーター・エアロスタビライジングフィン
ボディに小さな突起をつけることで、ボディの周囲にあえて空気の渦を起こします。そうすることで、空気がボディに沿って流れるようになり、車の安定性が高まります。
もともとは航空機で使われていた技術で、F1にも採用されています。
アンダーカバー
(出典:http://toyota.jp)
エンジンルームの下に取り付けるエアロパーツです。跳ね石などからエンジンルーム内の装置を保護します。また、このカバーによって車の下に流れ込む空気をコントロールします。そうすることで、エンジンの冷却効果を高め、揚力をおさえる効果があります。
エアロパーツは「性能重視」か「見た目重視」か
ここまでの説明で、エアロパーツの効果について理解できたのではないでしょうか。エアロパーツの意味を知ることで、ボディデザインの奥深さを感じることができると思います。
本来、エアロパーツとは、エアロダイナミクス(空気力学)により、走行性能を高めるためのものでした。しかし、現在では見た目の格好良さから、ドレスアップ目的でエアロパーツを付ける人が増えています。そのため、自動車メーカーも積極的にエアロパーツを扱うようになり、オプションでさまざまなエアロを選ぶこともできます。
エアロパーツの人気は高まっているため、社外品メーカーも多くあります。ただし、社外品のエアロパーツはエアロダイナミクスの効果が十分に検証されていない商品もあるため、注意しましょう。ただ、外品のエアロパーツの場合、選択肢が広く、デザイン性に優れたものもたくさんあるため、「見た目を重視したい」という人にとってはおすすめです。