車を安全で適正な状態に保つのは、車の所有者とドライバーの義務です。2年毎に車検に通すことは法律で義務づけられています。しかし、車検に通す際に行う整備点検だけでは車を安全な状態に保つことはできません。
ドライバーが自ら行う「日常点検整備」をしっかり実施することにより、はじめて車を安全に走らせることができます。車の整備不良による事故も多発しているため、きちんと日常点検を行うことが重要です。
しかし、日常点検を行う場合、どこをどのように点検すればよいのでしょうか。また、「どれくらいの頻度で行えばよいのかわからない」と疑問に思う人もいるかと思います。
日常点検のやり方は大きく分けて「エンジンルームの確認」「車のまわりを回って点検」「運転席に座って点検」の3つがあります。また、それぞれで点検項目があり、日常点検では全部で15項目のポイントをチェックします。また、日常点検を行う頻度はその車の状態にもよりますが、1ヶ月に1回程度は行うと良いです。
そこでこのページでは、日常点検のチェック項目とそのやり方について説明します。定期的に日常点検を行うことで、車をいつも安全な状態に保つことができます。そのため、以下の説明を十分に理解しておきましょう。
日常点検とは
また、法律でも「車の使用者は走行距離や車の状態などから判断した適切な時期に、車の点検しなければいけない」と定められています。つまり、車を常に適正な状態に保つための日常点検はユーザーの責任であり義務でもあるのです。
日常点検を行うことで、整備不良による事故を防ぐことができます。また、きちんと整備をしておくことで故障などの修理費を抑えるができます。事故や故障など起こし後悔しないためにも、車の日常点検することは非常に重要です。
日常点検のやり方とチェック項目
日常点検のやり方は大きく分けて以下の3つがあります。
- エンジンルームの確認
- 車のまわりを回って点検
- 運転席に座って点検
それぞれにおいて点検箇所が4~6項目あり、全部で15項目を点検する必要があります。日常点検の具体的なチェック項目は以下のとおりです。
【日常点検チェック項目】
エンジンルームの確認 | 1.ウィンド・ウォッシャー液の量
2.ブレーキ液の量 3.バッテリー液の量 4.冷却水の量 5.エンジンオイルの量 |
車のまわりを回っての点検 | 6.タイヤの空気圧(スペアタイヤを含む)
7.タイヤの亀裂、損傷や異常なすり減り 8.タイヤの溝の深さ 9.ランプ類の点灯・点滅具合、汚れ、損傷 |
運転席に座っての点検 | 10.ブレーキペダルの踏みしろ
11.パーキングブレーキレバーの引きしろ(踏みしろ) 12.ウィンド・ウォッシャーの噴射状態 13.ワイパーの拭き取りの状態 14.エンジンのかかり具合および異音 15.エンジンの低速、加速の状態 |
これらのチェック項目を日頃から点検するのが理想です。ライト類の点検などは1人では行えないため、他の人に協力してもらい確認しましょう。それでは、項目ごとに詳しく説明します。
1.ウィンド・ウォッシャー液の量
ウォッシャータンク内にウォッシャー液が十分に入っているかを目視またはキャップに付いているチューブで点検します。ウォッシャー液には、洗浄するだけでなくワイパーによるガラスの傷つきを防ぐ効果もあります。そのため不足している場合は、必ず車専用のウォッシャー液を補充しましょう。
2.ブレーキ液の量
ブレーキリザーバータンク内のブレーキ液が規定の範囲(「MAX」と「MIN」の間)にあるかを点検します。ブレーキ液の量が少なすぎるとブレーキが効かなくなってしまうため大変危険です。
ブレーキ液の減り具合が著しい場合は、ブレーキ液が漏れている可能性があります。このようなときは自分では対処しきれないため、、プロの整備士に点検を依頼して原因をつきつめましょう。
3.バッテリー液の量
バッテリーの液量が規定の範囲(「UPPER」と「LOWER」の間)にあるかを点検します。この際、車を揺らすなどして液面がどのあたりにあるのかを確認します。バッテリーの側面から確認ができない場合は、バッテリー液の注ぎ口から覗いて確認することも可能です。
バッテリー液が不足していると、バッテリー上がりやバッテリーの破裂などを引き起こしてしまうため必ずチェックする必要があります。
4.冷却水の量
ラジエーターリザーブタンク内の冷却水の量が規定の範囲(「FULL」と「LOW」の間)にあるかを点検します。冷却水の量が足りていないと、オーバーヒート(エンジンが熱くなりすぎてしまうこと)の原因になります。冷却水の量が著しく減っている場合は、ラジエータータンクまたはホースから漏れている可能性があります。冷却水の漏れが心配されるときは、プロに整備を依頼しましょう。
5.エンジンオイルの量
エンジンオイルの点検は、平らな場所でエンジンをかける前か止めて10分以上たってから行います。そうすることで、オイル量を正確にチェックすることができます。
オイルレベルゲージ(エンジン脇にささっている細長い棒で、指をかけて抜けるようになっている)を抜き取り、付着しているオイルの量が規定の範囲(「H」ろ「L」の間)にあるかを点検します。
エンジンオイルが不足していたり黒く汚れていたりする場合は、交換する必要があります。そのままにしておくと燃費が悪くなり、エンジンの故障にもつながる可能性があります。交換の頻度は車の使い方によって異なるため、エンジンオイルは定期的に点検する必要があります。
6.タイヤの空気圧(スペアタイヤを含む)
タイヤの接地部のたわみの状態を見て、空気圧が不足していないかを確認します。タイヤの空気圧は自然に下がってきます。空気を入れずにそのままにしておくと、走行の安定性が悪くなり、ハンドル操作も重たくなってしまいます。また、燃費を悪くする原因にもなるため、月に1回はガソリンスタンドや整備工場などでタイヤの空気圧チェックを行いましょう。その車の指定されているタイヤ空気圧は、運転席ドアの端やセンターピラー(前のドアと後のドアとの間にある柱)に貼ってあるラベルに表示されています。
7.タイヤの亀裂、損傷や異常なすり減り
すべてのタイヤに亀裂や損傷がないかを点検します。また、釘や石などの異物が刺さったり、かみ込んだりしていないかを確認します。さらに、タイヤの接地面や片方だけが異常にすり減っていないかもチェックしましょう。
タイヤが損傷、摩耗した状態で走行すると、パンクやスリップする危険性があります。タイヤの状態を見て、必要であれば必ず交換する必要があります。
8.タイヤの溝の深さ
タイヤの溝の深さが十分にあるかは、スリップサインを見て確認することができます。
スリップサインとは、「タイヤの溝の底にある盛り上がった部分のこと」です。タイヤの表面がすり減って溝の深さが1.6mmになると、スリップサインが現れます。タイヤ側面にある「三角マーク」は、スリップサインの位置を示すマークです。
9.ランプ類の点灯・点滅具合、汚れ、損傷
ランプ類の点検はエンジンのスイッチを入れてから行います。点検するべきライト類は以下のとおりです。
- ヘッドランプ(前照灯)
車の前方を照らす一番メインとなるライトのこと
- ウィンカーランプ
車が曲がるときに出す方向指示灯のこと
- ポジションランプ(スモールランプ、車幅灯)
車の前後左右の端についている車両の大きさの目安となるランプのこと
- ブレーキランプ・テールランプ(制動灯、尾灯)
夜間、後ろを走っている車に前方に車があることを知らせるためのランプのこと。ブレーキをかけたときにはより明るく点灯する
- バックアップランプ(後退灯)
車がバックしていることを示すランプのこと
- ライセンスランプ(ナンバー灯)
車のナンバープレートを照らすランプのこと
これらのランプの点灯具合や点滅速度に不良がないかを点検します。あわせてメーター内の表示灯もいっしょに点灯するかを確認します。また、ランプに汚れや損傷がないかもチェックしておくとよいです。
確認をするときは、他の人に協力をしてもらって行います。または、壁やガラスにライトを当てて確認することも可能です。
10.ブレーキペダルの踏みしろ
ブレーキペダルをいっぱいに踏み込んだとき、床とのすき間(踏み残りしろ)や踏みごたえが適正であるかを点検します。
床とのすき間が少なくなっているときや踏みごたえがやわらかく感じるときは、ブレーキ液の漏れなどが考えられます。そのような場合はブレーキの効きが悪くなっているため、すぐに整備を依頼するべきです。
11.パーキングブレーキレバーの引きしろ(踏みしろ)
パーキングブレーキには、「レバータイプ」のものと「ペダルタイプ」のものがあります。レバータイプの場合は、レバーをいっぱいに引いたときの引きしろが多すぎたり少なすぎたりしていないかを点検します。また、ペダルタイプの場合は、まずエンジンをかけ2~3回ブレーキペダルを踏み込みます。さらにブレーキペダルをいっぱいに踏んで床とのすき間が適正であるか、踏みごたえが適正であるかを点検します。
床とのすき間が少なかったり、踏みごたえがやわらかく感じたりするときは、整備工場などの整備士に点検をしてもらいましょう。
12.ウィンド・ウォッシャーの噴射状態
キースイッチをオンの位置にしてウィンド・ウォッシャーを作動させ、液の噴射状態や噴射位置が適切かを点検します。噴射状態が悪い場合は、安全ピンなどでノズルの穴をキレイにすれば改善されます。また、噴射位置が悪い場合は、手で直接位置を調整することが可能です。
13.ワイパーの拭き取りの状態
キースイッチをオンの位置にして、ワイパーを作動させます。ワイパーの速度を低速や高速に変化させ、動きに不具合がないかを点検します。このとき、ガラスを傷つけないためにウォッシャー液を噴射してからワイパーを作動させましょう。そして、ウォッシャー液がきちんと拭き取れているかを確認します。
拭き取り状態が悪い場合は、ワイパーブレード(ゴムの部分)の劣化が考えられます。この状態のままだと雨のときはとくに危険になるため、すぐに交換するべきです。
14.エンジンのかかり具合および異音
エンジンが速やかに動き出し、スムーズに回転するかを点検します。また、エンジンを始動させたときやアイドリング状態のときに異音がしないかも確認しましょう。
エンジンのかかりが悪かったり、変な音がしたりする場合は、なにかしらのエンジントラブルが生じている可能性があります。放置すればエンジン故障につながることもあるため、すぐにプロの整備士に見てもらうと良いです。
15.エンジンの低速、加速の状態
エンジンが暖まった状態で、アイドリング時の回転がスムーズに続くかを点検します。また、アクセルペダルを徐々に踏んだときにスムーズに回転数が上がるかをチェックしましょう。
アクセルペダルに引っかかりがあったり、加速がスムーズにいかなかったりした場合はメンテナンスの必要があります。
日常点検を行う頻度
法律では、「使用者が点検を行う適切な時期を判断する」とあります。つまり、必ずしも毎日点検をしなくても良いということです。ただし、決して「責任が軽い」というわけではありあません。
車の状態などを見て、自分で定期的に日常点検を行う必要があります。その車の状態にもよりますが、普段から問題なく走行している車であれば1ヶ月に1回を目安に日常点検を行いましょう。点検を行う時期をある程度決めておけば、忘れてしまうこともなくなります。
ちなみに、業務用のトラックやバスなどは、使用する前に1日1回点検を行うことが義務づけられています。
異常を感じたら速やかに点検を行う
ここまでの説明で、日常点検におけるチェック項目はどのようなものか理解できたのではないでしょうか。多くの点検項目がありますが、車を安全に走らせるためには必ず点検を行う必要があります。
ここで説明した点検項目以外にも、走行中にしか現れない不具合もあります。自分ではどのような不具合なのか判断できないケースもあるため、異常を感じたら整備工場などでプロの整備士に点検をしてもらうことが大切です。
故障や不具合が出てしまうと、定期的に行うメンテナンスにかかる費用より修理費のほうが高くついてしまうことがほとんどです。ですから日常点検はもちろん安全のためには必要ですが、メンテナンスなどの費用面を考えても欠かさずに行っておくと良いです。