車を運転する際、運転席からは左右や後方の視界が狭く、目視しても非常に確認しにくいです。また、車体は身体よりもはるかに大きいため、車両感覚がつかむのが難しいです。一通りの運転操作は自動車教習所で練習しますが、車両感覚をしっかりと身につけるまでには時間がかかります。そのため、「狭い道」や「駐車」が苦手という人もいるかと思います。
車両感覚が身についていないと車をぶつけてしまう可能性があります。また、狭い道や曲がり角で人を巻き込んでしまう危険性もあります。ですから車両感覚を身につけることはとても大切です。
車両感覚をつかむたかめには「知識」と「慣れ」が重要です。つまり車の特性を理解し、あとは練習や普段の運転で慣れていくということです。そうすれば、「狭い道通るとき」「対向車とすれ違うとき」「駐車するとき」「道路の脇に車を寄せるとき」などに、安全で確実な運転をすることができます。
そこでこのページでは、車両感覚をつかむための方法と知識について解説します。
車両感覚をつかむ方法
車両感覚とは、「車の前後左右の距離を感覚的にどれだけとらえているかということ」です。
前述のとおり、国産車(一般的な右ハンドルの車)の場合、車体左側の車両感覚がつかみにくいです。たまに狭い路地などで、人のすぐ脇を猛スピードで通り抜けていく車を見ます。あれは、車両感覚を身につけていない証拠です。なぜなら車両感覚を身につけていれば、それがどれだけ危険なことか理解できるからです。
左側の車両感覚をつかむための練習方法
車の左側の車両感覚を身につけるには、「道路の脇に停車する練習」をすると良いです。その際は、必ず車通りの少ない道で行いましょう。
方法としては、歩道または縁石から50cmほどの間隔を空けて停車する練習をします。不慣れな場合は、徐々に間隔を狭めていきましょう。
50cmほどの間隔を空けて停車したら、「車道のラインまたは縁石が、運転席から見て車のどの位置にあるか」を確認して覚えておきましょう。
実際に車を道路の脇に停車するときは、この位置と車道のラインや縁石が重なるまで寄せていけば、50cm程度の間隔を空けることができます。
このようなコツを知っていれば、車両感覚をつかむことは可能です。それと合わせて練習をすれば、車両感覚が身につきます。
ドアミラーを使った確認方法
「走行中」「道路の脇の停車するとき」「駐車するとき」などの車の位置を確認するには、ドアミラーを使った方法があります。
走行中では、両サイドのドアミラーから車線が見えるかを確認しましょう。どちらかのミラーで車線が確認できない場合は、車が片方に寄ってしまっています。ですから、両サイドのドアミラーから車線が見えれば、車は道路の中央を走っていることになります。この確認を繰り返すことで、どちら寄りに走っているのかを感覚でつかめてきます。
駐車をする際にも、ドアミラーの角度を少し下げることで駐車場の枠線が確認しやすくなります。そうすれば、車がきちんと枠内に収まっているか、線に対してまっすぐ止まっているかをチェックすることができます。
車を道路の脇に寄せる場合もこの方法は有効です。その際、左側のドアミラーの角度を少し下げましょう。そうすると、ボディの左側面がミラーに映ります。ミラーに映った側面と車線や縁石を寄せるように止まれば、安全で確実に車を幅寄せすることができます。
ただし、ドアミラーの角度を下げたまま走行するのは危険です。走り出す前に、ドアミラーの角度を必ずもとに戻しましょう。
内輪差を理解する
車が曲がるとき、前輪より後輪のほうが内側を通ります。その前後輪の軌道の差のことを「内輪差」といいます。たとえば大きなトラックが曲がるとき、前輪が交差点のなかを大きく円を描いて曲がっていくのを見たことがあると思います。トラックのように、前輪と後輪の間隔が広くなるほど内輪差は大きくなります。そのため、あのような曲がり方になるのです。
一般的に乗用車でも内輪差は生じます。内輪差に注意していないと、曲がり角のガードレースに車を擦ってしまうことがあります。また、巻き込み事故を起こしてしまう可能性もあり非常に危険です。
車体の左側(右ハンドルの場合)は、運転席から離れており、目線が届きにくい場所です。そのため、左へ曲がるときは内輪差による事故の可能性が高まります。とくに車両感覚がまだ身に付いていない人は曲がることに意識が集中するため、人や走行中のスクーターなどを巻き込んでしまわないよう十分に注意しなければいけません。
停止距離の感覚
「停止距離の感覚をつかむこと」と「停止距離についての知識があること」は、安全運転をするうえでは非常に重要です。停止距離とは、「空走距離と制動距離をあわせた距離のこと」です。
空走距離 |
運転者が危険を感じてから、ブレーキを踏み、ブレーキが実際に利き始めるまでに走る距離 |
制動距離 |
ブレーキが利き始めてから、車が停止するまでに走る距離 |
停止距離 |
空走距離と制動距離をあわせた距離 |
停止距離はスピードが速くなればなるほど長くなります。市街地を走行する程度のスピードであれば、普段の運転で停止距離の感覚を身につけることができます。しかし、スピードが速い場合の停止距離はかなり長くなるため、感覚としてつかむのは難しいです。場合によっては止まりきれずに事故につながる可能性もあります。そのため、スピードによる停止距離の変化を知識として覚えておく必要があります。
【スピード別停止距離】
ただし、雨の日は制動距離が長くなるため注意しなければいけません。それは、タイヤと路面との摩擦力が弱まるからです。また、すり減ったタイヤも摩擦力が低下するため危険です。このような場合、停止距離が2倍に伸びると考えて良いです。そのため、普段どおりに止まれば確実に事故の危険性が高まります。ですから、雨の日はとくに注意しましょう。
また、仕事などで疲れているときも危険です。なぜなら、疲労状態のときは危険に対する反応が遅れがちです。そのため、空走距離が長くなってしまいます。たとえしっかりブレーキをかけても、停止距離は反応するのがくれた分だけ伸びてしまいます。
いずれの場合も、普段の停止距離の感覚は当てになりません。力いっぱいブレーキを踏んでも止まりきれずに、事故につながってしまう可能性もあります。ですから常に車間距離を十分にとり、余裕をもって走行することが大切です。
まとめ
ここまでの説明で、車両感覚についての知識や身につける方法について理解できたと思います。
車を運転する人であれば、車両感覚を身に付けておくべきです。練習を繰り返して身に付けることも大切ですが、コツや知識で車両感覚をつかむことも可能です。そうすれば、運転中の危険を避けることができます。また、よりスマートな運転も可能になります。
車両感覚をつかむのは慣れの問題でもあります。ですから自信のない人は、ここで紹介した方法で練習してみましょう。