エンジンオイルは車の走行性能を十分に発揮し、安全に走行するためには必要不可欠です。そして、エンジンオイルの交換は車のメンテナンスの中でも非常に重要です。なぜなら、エンジンオイルはエンジンをスムーズに動かすためのものだからです。エンジンオイルがなければエンジンが壊れてしまったり、大きな負担をかけてしまったりすることになります。
愛車を売るときでも、エンジンの不調は大きなマイナス査定になってしまいます。そのため、エンジンをより良い状態に保つにはエンジンオイルの交換を定期的に行う必要があります。
しかし、カー用品店などに並ぶエンジンオイルは種類が多すぎるため、「どれを選んで良いのか分からない」という人もいるのではないでしょうか。何を決め手にエンジンオイルを選べば良いのか分からないため、結局お店の人にすすめられた商品を購入していると思います。
エンジンオイルを選ぶときの主な判断基準は、「粘度(ねばり度合)」「ベースオイルの種類」「品質規格」です。車のタイプによって合うエンジンオイルの種類は異なるため、ある程度エンジンオイルの特徴を見極める必要があります。
基本的に、カー用品店で進められたエンジンオイルで間違いはありません。しかし、きちんと納得したうえでエンジンオイルを選ぶためには、それぞれの判断基準を理解しておく必要があります。
そこでこのページでは、エンジンオイルの見分け方について詳しく解説します。
エンジンオイルの役割
エンジンオイルの交換が必要なことは分かっていても、エンジンオイルがどのような役割を果たしているのかについて理解している人は少ないです。エンジンオイルの役割は以下の5つがあります。
【エンジンオイルの役割】
潤滑作用 | エンジンが動くときの金属と金属の摩擦を和らげる潤滑油の役割があります。 |
密封作用 | エンジンオイルを満たすことでエンジン内の機密性を保ちます。そうすることで、エンジン内の爆発で作られた力を逃がさずに伝えることができます。 |
冷却作用 | エンジンは内部で爆発を起こしながら激しい動きをするため、非常に高温になります。エンジンオイルがあることで、エンジン内の熱を吸収し必要以上の加熱を防ぐことができます。 |
洗浄作用 | エンジン内の爆発や金属の摩擦により生じた汚れや金属カスを洗い落としてきれいに保つ作用があります。エンジンオイルが徐々に黒くなるのはそのためです。 |
防錆作用 | エンジン内部の金属に膜を作ることで、水分などで錆が生じるのを防ぐ効果があります。 |
このように、エンジンオイルはエンジンをスムーズに動かし、性能を十分に発揮するために重要な役割を果たしています。
エンジンオイルの判断基準その1:粘度(ねばり度合)で選ぶ
オイルの粘度とは、「そのオイルのねばり度合(ドロドロした状態かサラサラした状態か)を表す尺度のこと」です。オイルは温度によって粘度が変化するため、温度が上がればサラサラになり、温度が下がればドロドロになります。
エンジンオイルの粘度は、SAE(米国自動車技術者協会)によって規格化されており、「SAE粘度番号」によって分類されているのが一般的です。SAE粘度番号は、「0W」から「60」までの11段階に分けられます。SAEで定められた粘度分類は以下のとおりです。
SAE粘度番号
低温粘度(数字が小さいほどサラサラ) |
0W 5W 10W 15W 20W 25W |
高温粘度(数字が大きいほどドロドロ) |
20 30 40 50 60 |
【低温粘度の小さいエンジンオイルの特徴】※5Wや10Wなど
低温粘度は、数字が小さいほどオイルは柔らかくなります。
- エンジン始動性に優れる
- ファミリードライブ向き
- 燃費が良い冬向き
【高温粘度の大きいエンジンオイルの特徴】※40や50など
高温粘度は、数字が大きいほどオイルは固くなります。
- 高速性能に優れる
- モータースポーツに適している
- エンジン内の摩擦に強い
- 夏向き
車のタイプごとに適したエンジンオイルの粘度は?
また、車のタイプごとに適しているオイル粘度は異なります。タイプ別に合うオイルとその理由は以下のとおりです。
車のタイプ | 適しているオイル粘度 | 理由 |
ハイブリッドカー/コンパクトカー | 0W-20 | 粘度が小さくサラサラなオイルは燃費性能に優れているためです。 |
ミニバン | 0W-20~5W-50 | ミニバンは重量が重く、乗車する人数が多いです。またファミリーカーとして高速道路の利用することが多いため、「燃費重視の0W-20」から「高速走行重視の5W-50」が適しています。いずれも使用環境に合わせたものを選ぶことが重要です。 |
スポーツカー | 5W-40~15W-50 | スポーツ走行の場合エンジンが高温になるため、熱に強いタイプのものが適しています。 |
軽自動車 | 0W-20~5W-30 | 軽自動車の用途はさまざまです。「街乗りなど低燃費重視の場合は0W-20や5W-20」がおすすめです。「荷物の運搬などで負荷のかかる使用が多い場合は5W-30」が適しています。 |
このように車のタイプや使用環境によって適しているエンジンオイルの粘度は異なります。また、季節(夏か冬か)によって使うエンジンオイルの種類を変える人もいます。そのため、「この車にはこのエンジンオイルが最も適している」と言い切ることはできません。
しかし粘度による性能の違いを理解することで、カーショップなどでおすすめされたオイルを納得して購入することができます。
エンジンオイルの判断基準その2:ベースオイルの種類で選ぶ
エンジンオイルはベースオイルによってもその性能は異なります。ベースオイルには、「化学合成油」「部分合成油」「鉱物油」の3種類があります。ここでは、それぞれについて説明します。
化学合成油とは |
化学的に作られたエンジンオイルのことです。不要な成分がまったく含まれていないため、潤滑性が非常に良いことが特徴です。また、廃棄するときの環境への影響を考えた高性能オイルでもあります。価格は高めにはなりますが、「車を大切に乗りたい」「スポーツ走行を楽しみたい」という人にはおすすめです。 |
部分合成油とは |
「鉱物油の弱点である揮発性の高さ」を化学合成油で補ったオイルです。価格は化学合成油より抑えられているため、通勤などで車を毎日乗る人に適しています。 |
鉱物油とは |
原油から不純物を取り除いて精製したオイルで、最も一般的に使われているオイルです。街乗りなどの普段使いには問題ありませんが、「オイルの劣化が早い」というデメリットがあります。「とにかく安いオイルが良い」という人にはおすすめです。 |
ベースオイルによって性質は大きく異なる
ベースオイルで選ぶポイントを分かりやすく表でまとめます。
ベースオイルの種類 | 劣化しにくい | 始動性が良い | オイルが減りにくい | 価格が安い |
化学合成油 | ◎ | ◎ | ◎ | △ |
部分合成油 | ○ | ◎ | ○ | ○ |
鉱物油 | △ | ○ | ○ | ◎ |
これを見て分かるように、エンジンオイルの性能としては化学合成油が最も優れています。しかし、価格が高いというデメリットがあります。したがって、「エンジンオイルの性能」と「価格」のどちらを重視するかによって、選ぶエンジンオイルは違ってきます。
エンジンオイルの判断基準その3:品質規格で選ぶ
エンジンオイルの品質は、「API(米国石油協会)」と「ILSAC(日米自動車工業会)」によって定められています。たとえば、APIの場合は以下の記号で規格分けされます。
エンジンオイル規格(API)
※右にいくほど高品質
ガソリンエンジン |
(記号) SA SB SC SD SE SF SG SH SJ SL SM SN |
ディーゼルエンジン |
(記号)CA CB CC CD CE CF CF-4 |
この品質規格の表示もオイル缶に書かれています。そのため品質の分類表示を確認すれば、そのオイルがどの程度のグレードが判断することができます。
当然、高品質のエンジンオイルほどエンジン性能が十分に発揮できます。また、エンジンにとっても優しいエンジンオイルと言えます。ですからエンジンオイルは高品質に越したことはありませんが、やはり価格は高くなります。したがってエンジンオイルを選ぶときは、自分が何を重視したいのかを考えておくと良いです。
まとめ
ここまでの説明で、エンジンオイルを選ぶときにどのようなポイントに注目すれば良いのか理解できたのではないでしょうか。
エンジンオイルを選ぶときは、「オイルの粘度」「ベースオイルの種類」「品質規格」をチェックする必要があります。しかし、車のタイプや使用目的によって適しているエンジンオイルは異なります。また、エンジンオイルの種類によって生じる価格差も選ぶときのポイントになります。
まずは「車のタイプ」や「車を使用するシチュエーション」を踏まえて、カーショップなどで専門知識のあるスタッフに相談してみましょう。その上で、ここまで説明したエンジンオイルの判断基準を確認しながら選ぶと良いです。そうすれば、あなたの愛車にピッタリのエンジンオイルを探すことができます。